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営業資料の「役割に応じた使い分け」について

営業時に使う資料は、サービス説明資料、会社紹介資料、媒体資料、製品カタログ、提案資料、報告資料、ディスカッション資料、事例資料などがあります。
これらは場面に応じて明確に区別した設計が求められ、区別ができていない場合、営業活動の本質を失い、最適な顧客対応が難しくなってしまいます。
ではどのような点に気を付けて資料を区別し、作成すればよいのでしょうか。本コラムではフェーズと相手による使い分けの考え方をお伝えします。


フェーズによる使い分け

例えば初回訪問では、サービスや会社の強みをわかりやすく伝える「興味喚起」が重要です。
一方で具体的な解決策を提示する提案段階では、顧客が抱える課題と自社の提案がどのようにリンクするかを明示することが求められます。
また、提案資料の付帯資料として使用されることの多い「ディスカッション資料」は、「課題解決の方向性の確認」として1.5次的な商談での使用を意図したものであり、正式な提案前に顧客の課題認識と仮説を共有し、次のフェーズへと円滑に進める役割を果たすのです。

このように適切に資料を使い分けることが、商談の成否を左右し、信頼関係を築く上での鍵となるのです。


相手の商文化による使い分け

資料作成においては、相手の立場や業界特有の文化にも注意を払うことが求められます。業界ごとに資料構成を大きく変える必要はありませんが、相手の商文化を充分に理解する必要があります。

例えば、食品業界に提案書を出す場合、異物混入リスクへの配慮からホチキスの使用は御法度です。その他、業界によっては法律的に記載してはいけない言い回しもあります。業務委託契約の提案時に役務内容を明示しないと、後々「言った、言わない」のトラブルに発展してしまう可能性があります。また、相手企業のSDGsの取り組みやペーパレス化環境に応じても、紙で印刷するか資料を投影するかの選択が迫られます。商談前にお客様にとっての理想的な商談方法を確認しておくと良いでしょう。


顧客の状況による使い分け

営業資料は顧客の購買行動に基づき、その内容を柔軟に変化させる必要があります。例えば、新規購買とリピート購買では、求められる情報量や説得のアプローチが異なるのです。

新規顧客に対する提案では、ブランド価値の訴求と共に、なぜそれが必要かという根拠の明示、顧客環境を取り巻く目標とのギャップやライバルとのギャップ、市場環境のギャップから導く理想環境の啓蒙が必要です。一方、リピート購買においては、すでに使用経験のある顧客に対し、追加の価値提案をするため、簡潔さとわかりやすさに焦点を当てた資料が適しています。

加えて、新規顧客が既存の製品から自社製品への「リプレイス」を検討している場合は、単なる情報提供に留まらず、導入後のメリットやトラブル発生リスクの軽減方法など、具体的なサポート内容と、サービス乗り換えのリスクに対する不安を払拭するための、シミュレーションや事例を活用し、他社製品に対する優位性を証明する資料が必要となります。


社内展開による営業力の基盤づくり

営業資料の運用は単に商談の成功を目指すだけでなく、社内の長期的な営業力の基盤を築くことにも役立ちます。資料作成を通じて営業の標準化を推進することで、属人性に依存せず、組織全体で安定した営業成果を上げる体制が整備できます。

特に、トップセールスの発言や行動を資料として再現することにより、全員が一貫性を持ったアプローチを取ることが可能になるのです。


今後の営業資料作成に向けた示唆

営業資料の中でも、特に提案書の作成は相手に提供する「価値」の明示と、相手にとっての「利益」を如何に伝えるかが問われます。

価値は「役にたつ度合い」と言い換えると分かりやすいのではないでしょうか。顧客にとって役に立つもの、つまり、顧客が主語なのです。
ですので、提案書における「価値の明示」とは、ファクトファインディング(事実把握)による課題設定と、その課題を解決するためのプランといえるでしょう。提案書は機能や強みの自己中心的なエゴ資料ではなく、顧客の課題解決に繋がる、顧客の関心毎に合わせたパーソナライズにこそ、神が宿るのです。



著者:今井 晶也 (いまい まさや)


株式会社セレブリックス セールスカンパニー
執行役員 カンパニーCMO
セレブリックス営業総合研究所 所長
兼 セールスエバンジェリスト



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