デジマジ2021~セールス×地方×デジタル~

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2021年6月25日、地方の企業を中心に、デジタルを活用した顧客開拓を応援するイベント 『デジマジ2021』を開催しました。 このイベントでは「デジタル活用の体験情報」として、地方企業がリアルに「今」取り組むべき情報を、各分野のエキスパートが対談形式でお届けしました。

セッション3では、スピーカーにアイセールス株式会社 代表取締役 田中氏、株式会社morich 代表取締役 森本氏をお招きし、弊社 今井をファシリテーターとして「セールス×地方×デジタル」について対談いただきました。

目次[非表示]

  1. 1.そもそもデジタル営業とは何か?
  2. 2.デジタル営業の実態は?
  3. 3.どんなことから始めるべきか?
  4. 4.営業におけるデジタル活用の押さえておくべきポイントは?
  5. 5.最後に


※以下、動画の内容を文字起こししたものです。


そもそもデジタル営業とは何か?

田中
デジタル営業やリモート営業、インサイドセールス、オンラインセールスなど、営業はいろいろな呼ばれ方をすると思いますが、それぞれの言葉の定義は何でも良いかなと思っています。

最終的に業績が上がれば良いという話です。業績が上がるというのは、お客様が喜んでくれればその結果論でしかないと思っていまして、その点においては2つポイントがあるかと思います。

1つ目は、自分の営業の業務が楽になるものです。
営業のフローが短縮されたり、オンラインで話をしたりすることも営業のDXだと言われています。本来会う時間が短縮されて話ができるという点で「楽になる」ということです。これが一般的に溢れているデジタル営業の中身かなと思っています。

2つ目は、まだまだ数は少ないですが、本来営業パーソンができなかったことがデジタルでできるようになることです。
こうなってくれば、デジタル営業はもう一歩進むのではないかと思っています。たとえば、マーケティングオートメーションもその一つだと思っています。本来はマーケターしか使えなかった機能が営業パーソンも使えると、お客様のトラッキング情報が見えるわけですから、営業パーソンが感覚で何となく聞き出していたものが、お客様がメールを開いたか開いていないか、資料をダウンロードしたかしていないか、今このリアルタイムの商談中にお客様が自社のページを見ているかどうか、こういったものって、楽になるというよりかはできなかったものになる代表的なものかと思います。

世の中一般的には、まだまだ営業パーソンのフローが楽になるものが多いです。これは第一ステップとしては間違いではないです。ただ、そこは既にいろいろなツールを導入して業務改善しているということであれば、さらにその上の、セールスパーソンが本来できなかったことをどうやってツールでできるようになるのかというところにチャレンジしていただきただいです。


今井
まさに仰っていただいた通り、営業だと感覚的に「このタイミングで連絡した方が良いのではないか」「お客様の確度はこんな感じなのではないか」というような、人に依存してしまったものが多かったと思うのですが、デジタルだとそこがyesかnoで判断していく形になるので、より明確に定義化されていくということですよね。


森本
今田中さんが仰っていた「楽になる」というのは、言い方を変えると「生産性を上げる」ということになるかと思います。もう1つ別の観点からお話しすると、営業の中でも成果が出ている人と出ていない人の違いは何かということをもう少し科学的にわかるようにする、といったことも、デジタル営業の一つの目的になるのかなと思っています。

私がリクルートにいた頃、表彰された時は表彰台に立ってスピーチをするのですが、多くの人は「ラッキーでした」「良いお客様に巡り会えました」「周りの方のサポートのおかげです」など言うんですね。私ももちろんそう思っていたのですが、私はいつも「なぜ成果が出せたのか」ということをExcelや電卓を叩きながら分析していたんです。
しかし、今はExcelや電卓を叩かなくても、いろいろな便利なツールがあって、それを上手く活用すれば、成果が出ている人と出ていない人の差や原因がわかるようになったということは、大きな進化なのではないかと思っています。

あとは、リクルートという会社は「再現できる形にする」、要は、ノウハウやナレッジを組織をあげて共有することを良しとしてきた組織なんですよ。例えば、私が新入社員で入ったばかりであったとしても、評価指標の3割くらいが組織貢献度だったんです。おそらく、多くの会社は、とにかく自分で営業成績を上げることが評価の100%だと思うのですが、リクルートという会社は入社した当初から、評価の3割はいかに組織に貢献するかということなんですね。これは、自分の行動で成果が上がったことや、やって良かったと思うことをナレッジ化して他の人でも使えるように再現性をもたせるということです。昔はそれこそツールがなかったものの、今は、そういったノウハウを蓄積したりデータを出力したりする便利なツールがあるので、ナレッジやノウハウを共有して再現しやすくなったのかなと思います。


今井
田中さんと森本さんからそれぞれちょっと違った角度でデジタル営業のお話をいただきましたが、田中さんからは、商談においてお客様と対峙をする時に営業プロセスをもっと短縮して簡単にするというところと、営業パーソンができていないことをデジタルでできるようにするといったところを挙げていただいて、そこに加えて森本さんからお話しいただいたのは、トップがやっていることや営業でうまくいったことを見えるようにして、それを他の人たちでも真似できるように再現性を持つ。これがデジタル営業の目指すところであり、定義になってくるのですかね。

お2人に聞きたいと思っていたのですが、確かにインサイドセールスの場面で使えるツールや顧客管理で使えるツールは何かと訊かれたら何となく思い浮かぶんですけど、商談の場面で使えるツールと言うと、まだピンと来ていない方がいらっしゃるんじゃないかと思うのです。商談で使えるツールだと、たとえばどんなものが挙げられますか?


田中
先ほどお話した「楽になるもの」を分解して考えると、営業パーソンが楽になるものとお客様が楽になるものに分けられると思っています。

SFAとかってどれだけ情報を入力してもお客様が楽になるわけではないじゃないですか。お客様が楽になるものって、例えばその場でwebで商談しながらお申込みができるようになるといったものも1つだと思いますし、提案している資料を後で共有するのではなくすぐに共有することで社内に共有できるとか、そういったものもお客様の検討フローが楽になるものだと思います。

今井さんの今の質問で商談をしていくときに楽になるものという時に、営業フローはデジタル営業になろうとそれ以前の手法になろうとそんなに変わらないですから、「お客様が楽になるフローは何か」という視点で考えると、営業をやっている皆さんは自ずと改善点が見えてくるのではないかなと思っています。


今井
電子契約なんかもまさにその一つですよね。


田中
あと、やはりデジタル営業になると商談においても参加者が増えるじゃないですか。そんな中、「質問してください」と言っても質問が出ないことが多いですし、商談においても都度質問はなかなか出てこないので、いくつか匿名で質問できるツールを、ウェビナーだけではなく通常の商談においても用意しておいて、「同席者がいらっしゃるようでしたら、匿名ツールがありますので、私がご説明している間に何でも聞いてください」といったように、お客様の心理的ハードルを下げるために使えるものかなと思っています。


今井
ちなみにうちは、商談の前にアンケートをお送りしています。これの何が良いかと言うと、お客様側が喋る内容を事前に準備してくださるんですよね。その場の対応で課題を彫り上げようとするとお客様も事実をわかっていなくて何となくでお答えいただくケースってあるじゃないですか。

しかし、「たぶん」の情報を掘り下げてもそこに真実はなくて、持ち帰った課題が事実と全く異なる内容であったりする場合もあるので、事実をお客様側でもしっかり調べておいていただいて、そのうえでコミュニケーションを取ると、会話が活性化するとかインサイトを捉えた提案ができるみたいなことはありますよね。


森本
プロセスに応じたツールはある程度皆さんもご存知だと思うんですけど、たとえば、企業様の課題やニーズをとにかくヒアリングしてそれをいかに皆に共有できるかといった時に、以前はヒアリング能力によって内容の濃淡に差が生じていたものが、今ではツールを使って共有できます。こういった、今皆が当たり前に使っているものを使いこなすだけでも、営業の生産性やクオリティは大きく上がると思っています。


今井
確かにそうですよね。まずテクノロジー化しようと思った時に最初に見つけなればいけないのって無料でできるものをとにかく使ってみることですよね。Googleを頼れば大抵のことはできますしね。まずは足元からできることを見ていくというのも大事かもしれないですね。


デジタル営業の実態は?

森本
今、ご縁があって山形県のDX推進にプロジェクトとして参加をさせていただいています。そこはいろいろな切り口で議論を重ねていって、行政主導で県下の企業様にいかにDX化を進めていただけるかといったところに取り組んでいるのですが、まず、行政でさえも真のDXとは何ぞやというところから学習を進めていらっしゃっています。

取り組みの成果として出てきているなと思うのは、たとえばデジタル化を進めるにあたって、「そもそもデジタル化って何?」「ツールの違いって何?」ということに対して、地方だと分かる人がなかなかいなかったり、経営者自身も「自分はアナログなんだ」とちょっと抵抗を示されるような方々が多い中、今の事業計画を進めるにあたってツールの導入などにおいてハブになっていただく方が副業として中に入って推進していくといったプロジェクトが進んでいたりして、いかに県下の企業様のDX推進を進めていくかということを「人」がハブになって進めていたりもしています。


田中
やはりデジタル化は進んでいないですよね。遅れているような印象を受けています。

森本さんが仰っていたように、使いこなせる人がいないというところが非常に大きいです。当社もツール×人の伴走をするというところで、スケールするのではなく一社一社入り込んで推進しています。地方企業がデジタル営業を進めるにあたっては、ツールというのはあくまで手段でしかありませんので、その目的をきちんと定義して推進できる人が必要かなと思っています。

地方のDX推進はいろいろな面でチャンスだと思っています。1つは、地方企業から1社でも2社でも使いこなせる企業が出てくれば市場シェア・占有率が上がっていきます。もう1つは地方企業のDXをサポートするというビジネスチャンスというのは大きいと思っています。


森本
DX化の遅れは今の日本全国のペインの一つだと思っていて、副業支援あるいは、アイセールスさんのように、導入して終わりではなくて、導入した後しっかり使いこなせるように伴走支援していく。このどちらかじゃないと、デジタル営業なりDX化というのは難しいだろうと思います。

今、ふるさとや地方で役に立ちたい、地方を元気にしたいというマインドセットの方って物凄く多くて、コロナによってそれが実現できるようになったかなと感じています。


どんなことから始めるべきか?

田中
皆さんがどういった状況かにもよりますが、やはりCRMとSFAは絶対にに入れるべきだと思います。

都内のIT企業であれば入れていると思うのですが、地方の場合は商圏が限られていますから、そこまでしなくても良いと感じている方も多いと思うんですけれども、SFAやCRMとなるとある程度投資も必要ですから、まずは顧客台帳をしっかりと会社の資産としてデジタル化していくというのがとにかく第一歩目だと思っています。

その次は、お客様が楽になるツールを入れることです。これは業種業界によって多少変わってくるとは思いますが、お客様が検討しやすくなる、申込みしやすくなる、比較検討しやすくなる。この「お客様を喜ばせる」という観点は非常に重要だと思います。


今井
まさにデジタル化の真髄は買い方の革命でもあるんですね。


森本
実際に副業人材で地方のお客様や中小企業様をサポートさせていただいて、皆さんが口を揃えて言うのは「数字の管理が甘い」ということです。顧客情報の管理が弱いということですね。

営業において言うと、まずは売上といった数字の管理と顧客管理のところを見える化して、現状の自分たちの資産・アセットがどうなっているのかということをしっかり把握するところからスタートした方が良いのかなと思っています。

もう1つは、やはり地方ではコロナの状況も含めてリモートワークというよりもオフィスワークが多いと思うんです。採用の観点で言えば、対面営業の場合そのエリアに住んでもらわないといけない。でも、フルリモートに対応しすれば地方や遠方に住んでいる方でも採用出来るんですよね。そういう意味で言うと、やはりリモートワークの環境を作っていただくだけで、より優秀な営業パーソンを採用できたりして、実は採用力も上がるんです。

リモートワークや在宅勤務ができると、その次に課題が出てくるのはマネジメントです。

見えないところの社員をマネジメントするという観点でも、セールス×デジタルというのをしっかり使いこなせるようになると、数字の分析ができて、その中でトップセールスとの違いやKPIの課題などがわかり、単なるモチベーションマネジメントではなくてしっかりコーチングもできてくるようになると思います。

したがって、まずは採用力を上げるためにリモートワークを進めていただき、その先では営業を科学するようなツールを使いこなしていただくと、リモートワークの中でのマネジメントがしっかりとできるようになります。こういった成功事例が生まれてくると良いなと思っています。

やはり、マネジメントってツールを使ってデータを見に行くといったことができないと部下の営業パーソンが何に困っているのか分からないと思います。そのため、そういう意味でも営業を科学できることというのは、結果としてはマネジメントのレベルが上がってくるものなのではないかと感じます。


営業におけるデジタル活用の押さえておくべきポイントは?

田中
やはり、社長がやるかやらないかという決めの問題が一番大きくて、地方企業の役員は基本売ってきた人が専務などになっているんですよね。この人たちが「必要だ」と思わないと、特に営業なんかはDXが進まないんです。基本、売れている営業パーソンにDXは必要ないと思っていまして、MAやSFAがなくても引き続き売ってくるんです。なので、そういう人に対していくらプレゼンしても響かないと思うんですよね。

森本さんも仰っていたように、DXというのは組織立って営業チームを組んでいくときには絶対必須なので、この人たちが必要だと思わなければちょっとツールを入れたところで本質的には変わらないかなと思っています。押さえておくべきポイントは、社長や専務を説得することで、説得するには権威性のある人が話をしていく必要があるかなと思います。


森本
成功事例を1つお話しすると、東北の企業様なんですけれども、お父様から息子さんに代替えをしたタイミングで大きく仕組みから変えようという働きかけをされたという事例があります。そこでまずは「人」だということで、ITに精通している人を3人迎えて事業そのものも含めてDX化を進められたんです。

これは経営者の意識を変えるタイミングだったり、あとは行政や地銀といった、そのエリアの中で影響力の大きい方々が啓蒙活動を常にしながらタイミングを見計らって一気にDX化を進めていきました。ここでのポイントは、使いこなせる人がいること、そして小さく始めて成功事例を作っていけば、地方の場合だと一気に口コミで広がっていくので、そういうのを見せていくことなんだろうなと思います。


今井
私は、ナレッジシェアという考え方が今後の営業活動ですごく大事になる気がしていて、弊社でもアプリケーションを使ってナレッジシェアをしています。今、皆在宅で仕事をしているので情報がなかなか共有し合えなかったり、営業をもっと上手くいかせるためにどうしたら良いのかといったところが、今までは隣にいた先輩がアドバイスしてくれたものの、今はアドバイスをもらえないじゃないですか。

そこで、情報をタグで管理していって、営業活動における悩みをもう一人で悩まないようにして、いろんな場所にいても情報を共有できるということが商談でも大事なのかなと思っています。


森本
大分の不動産の企業様で、そこで働いていた女性が、出産してなかなか家から出られないというので退職意向を出した時に、「じゃあリモートワークをやろう」となってリモートワークに着手し、彼女がリモート×営業という形で、いろいろなツールを勉強してきてきたことが、1年で大変革したんですよ。そういうきっかけのようなものを逃さず拾ってくるのも大事ですよね。


最後に

森本
このコロナが収まったとしても、デジタル化の波、DXの波というのは間違いなく加速していって、逆に言うとこれを味方に付けない手はないと思います。それが企業競争力や差別化につながってくると強く確信しているので、とにかく小さなことからやってみるとか、無料ツールを使ってみるとか、もし自分が苦手意識があるのであればそういうのが得意な人に任せるなどして始めてみるのが良いかと思います。


田中
結構DXする時に、大変だとか業務が増えると思われている方が多いと思うのですが、DX化は非常に楽しいものだと思っているので、だまされたと思って社内チャットでも良いので何かツールを入れてみてください。

とにかく楽しいものだということはお伝えしたいです。本来楽しめるものがデジタルのツールだと思いますし、開発している私たちもいかにユーザーに楽しんでもらうか、カスタマーエクスペリエンスをどう向上していくかに投資しているわけなのでそれを享受いただいてDXの過程を楽しんでいただけたらと心から思っております。


今井
営業DXや営業のデジタル化と言いながら、出てくるキーワードとしてすごく多かったのは「顧客」「人」といったような、営業というキーワード以外のもので、とても印象的でした。

DXと言っても、最後を動かすのは人だというところで、どういった人材をそこに置くのかといったことが重要だとわかりましたし、営業の革命というのはつまるところ買い物の革命だと、お客様を便利にするために存在するのだと、そして皆が楽しくなるのだというところに新しい気づきを得られました。是非、今後DXを推進する企業様にそんな思いをお届けできたらなと思います。

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