アカウントベースドマーケティングを成功させる手順
最近注目されているアカウントベースドマーケティング(Account Based Marketing)という言葉、B2Bの世界でビジネスを展開される企業様では耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか?
特に米国では数年前から流行しており、”アカウントベースドマーケティングに関するコンサルタントや管理ツール、代行業務等が続々と登場し、ビジネスを推進していく上で当たり前の手段となっています。
マーケティングという名が用いられていますが、この考えや取り組みを推進する必要があるのでは、むしろセールスの現場、つまりは営業部門で大切にしなければならない考え方と言えます。そこで、今回のコラムでは「アカウントベースドマーケティング(Account Based Marketing)」について解説するとともに、後半では具体的な成功に向けた方法もご紹介していきます。
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本記事とあわせて、営業力を高めるための新規開拓チェックリストをぜひご活用ください。新規開拓で生産性を向上させ、成果を高めるためのチェックリストです。営業パーソンや営業組織が持つべき基本的なスタンス、起こすべき行動から、実際の営業活動で実施すべき項目までまとめています。
目次[非表示]
- 1.アカウントベースドマーケティングとは?
- 2.アカウントベースドマーケティングをおススメする理由
- 2.1.1.お金が掛からない
- 2.2.2.実績と信用を武器に営業ができる
- 2.3.3.日本は人情的
- 2.4.4.課題を把握しやすい
- 2.5.5.生産性アップ
- 3.アカウントベースドマーケティングの手順
- 3.1.①ターゲットを設定する
- 3.2.②アプローチする“ネタ”を収集する
- 3.3.③社内の接点を確認する
- 4.まとめ
アカウントベースドマーケティングとは?
アカウントベースドマーケティングとは、『特定のターゲット顧客(企業)を選び、その顧客からの売上を最大化することを目的とした、全社的に行う戦略的な営業・マーケティング活動』である。
私たちセレブリックスでは、アカウントベースドマーケティングをこのように定義しております。
文字通りAcount(口座や接点)をBased(土台・重点)に置いたMarketing(顧客開拓)と訳すことが出来ますので、簡単に言えば接点を活かした顧客開拓活動と考えることができます。原則としては、過去のリード(見込み客)や名刺交換をしている企業など、何らかの接点情報をフル活用し、ひとつの企業からできる限り多くの取引を増やしたり、取りこぼし無く受注をつくることが最大の目的です。
いわゆる、コールドコール(冷たいリスト)と呼ばれる「縁もゆかりもない接点のない顧客」に1社ずつアプローチをするアプローチ方法と比べて、企業のニーズがあらかじめ特定できたり、これまでの実績や関係性の中で築いた信頼関係を活かすことが出来るため、効率よく営業活動(マーケティング活動)ができるのが利点です。
1社から多くの取引と機会損失がない状態を目指すわけですから、一つの商品やサービスを提供して終わりということはありません。異なるニーズや課題を満たす様々な商品やサービスを提供し、包括的に企業の課題解決を実現していく必要があります。
また、顧客のニーズを満たすための必要な機能が、自社の商品にない場合は、自社の商品やサービスだけで解決を目指すのではなく、外部パートナーやサプライヤーの商品・サービスとコラボレーション提供したり、代理販売するなどして、あらゆる手段を講じて売上をつくる(ニーズを満たす)という考え方が必要です。
加えて、1社からの取引先を最大限増やすために、日頃から取引のある窓口だけではなく、他事業部や別ブランドマネージャーをご紹介いただくなど、社内紹介等も積極的に要望していくことが重要です。まさに、特定のターゲットに対して「顧客深耕」していくというのが、このアカウントベースドマーケティングの基本的な考え方となります。
国内では、広告代理店などが昔から取り入れている営業手法や手法と似ていますが、近年注目されているABMは、単純な特定の顧客に依存した旧来体制の御用聞き営業とは異なり、「顧客が気付いていない課題(インサイト)」を営業担当が発見し、提言していくことで、自ら商談機会を創り出す手法に関心が寄せられています。
コラムの後半部分ではこれらの、顧客が気付いていない潜在的な欲求の源(インサイト)の見出し方も含めて解説していきます。
アカウントベースドマーケティングをおススメする理由
アカウントベースドマーケティングは他の様々なマーケティング活動と異なり、比較的に取り組みやすい点が今注目されている最大のポイントです。
もちろん、特定の企業の動向をリアルタイムでチェックするためにはMAツール(マーケティングオートメーション)を活用して定期的に接触し続けたり、sansan等の名刺管理システム等を利用して名刺交換先の動向をウォッチできるようにすることは重要です。しかし、ABMはターゲットに選ぶ企業の母集団(数)によっては、大掛かりのシステムがない状態でも、「今の体制」「有料サービスを導入しない」ことを前提に取り組むことが可能です。
これらの前提を踏まえて、海外で注目されているABMが、日本の市場でもマッチすると考えられるポイントを記載します。
1.お金が掛からない
2.実績と信用を武器に営業ができる
3.日本は人情的
4.課題を把握しやすい
5.生産性アップ
これらを一つずつ簡単に解説いたします。
1.お金が掛からない
文字通り、大規模なシステムや有料サービスに依存せずに開始できる取り組みのため経済的です。
また、費用負担がなければ、お試しとして運用しやすいため、失敗のリスクが少ないのも嬉しい利点です。
2.実績と信用を武器に営業ができる
日本は世界でも珍しい、「信用取引」という風習でビジネスを行う特徴があります。
売掛や買掛をはじめとした、いわゆる「末締め翌月末支払」といった考えもこれに当たります。
ビジネスにおいて信用や信頼を重視する文化だからこそ、「すでにある接点を活かす」という点で、縁もゆかりもない初回の営業に比べて、顧客側が我々を選ぶ理由を創り出すことが出来るのです。
3.日本は人情的
合理主義の欧米ではあまり見られない考えですが、日本では「お付き合い」や「関係性」を大事にする文化があります。
文字通り、これまでの関係性があると無下に断れなかったり、情が生まれるために、案件を獲得出来たりといった「関わり」による取引が発生するため、効果が高いと考えられます。
4.課題を把握しやすい
日常的に関係が築けていて、コミュニケーションによる意思疎通ができていれば、当然、顧客は信頼関係を基に困っていることや悩んでいることを営業に相談しやすくなります。
その相談の数だけ、営業にとっては商談のチャンスが生まれることになるのです。
5.生産性アップ
これまであげた1~4のように、コストがかからず効率よく受注があがると1人の営業パーソンが生み出すことのできる利益を最大化させることが可能になります。
アカウントベースドマーケティングの手順
ではここからは、はじめてABMを実践する方向けに、具体的な手順をご紹介したいと考えます。
①ターゲットを設定する
攻めるべきターゲットを設定しましょう。ターゲットは「年間の売上●円以上」のような漠然としたものではなく、具体的な企業名まで落とし込むことが重要です。ここでポイントになるのが、深く関わりを持つことが出来れば新たな案件を生み出せたり、他部門を紹介していただけそうなポテンシャルがある企業かどうかの見極めです。
言葉を濁さず言えば、お金の余裕があまりなく、普段接点を持っている顧客担当が社内の大体の決裁権を持っている・・・という企業の場合はそもそもABMの対象にする必要がありません。(これまでの既存顧客として定期的にフォローする対象であり、ABMを掲げて実施すべき対象ではない)
自社の商品やサービス、または協力機関やサプライヤーを棚卸した時に、どんな課題解決をできる商品群を持っていて、顧客のどのようなニーズを満たすことができるのか、そしてその課題解決を実現できる可能性がある顧客がどの企業なのか?バイネーム(具体名)でターゲットをリストからピックアップしていきましょう。
また、そのターゲット企業は出来るだけ複数サービスや複数ブランドを手掛けていて、キーパーソンや決裁者が複数いる企業の方が(営業先が複数部門ある)望ましいです。その方が、1社から得られる売上や取引数を最大化させることが可能です。
ちなみに、最初は多くの企業を選ぶ必要はありません。1社に対して、様々な切り口でアプローチしていくため、時間も頭も使いますので、最初はテストも含めて、1~2社選ぶところから始めましょう。※選ぶ企業は取引がある方がよりGOODですが、接点があれば取引が無くても実施可能です
②アプローチする“ネタ”を収集する
ターゲット企業の動向を徹底的にチェックし、最適なタイミングでアプローチしましょう。IRや人事異動、新サービスのリリース情報など、企業が発信している情報は多岐に渡ります。
セレブリックスが実際に行っている手法としては、
A) Googleアラートを登録する(無料)
WEB上の気になるキーワードをチェックして、メールでお知らせしてくれる機能です。
新商品やサービスリリースをいち早くキャッチアップしたい場合におすすめです。
URL:https://www.google.co.jp/alerts
B)プレスリリースサイトをウォッチする(無料)
PR配信サイトをウォッチして、顧客情報や顧客のライバルの最新情報を収集して商談機会をつくります。
PRタイムス:https://prtimes.jp/
C)ターゲット企業のWEBサイト内のプレスリリースを毎日チェックする
D)日経テレコンやsansan等で企業の人事異動を掌握する
URL:https://t21.nikkei.co.jp/g3/CMN0F11.do
E)自社商品の導入事例や成功事例などターゲットが興味を抱くコンテンツを収集する
F)期末前等の予算消化時期や状況が変化するタイミングを把握する
・・・などが挙げられます。
大きく分けて、
①顧客の購買意欲の変化が起きそうなタイミング
②顧客の変化が起きたタイミング
③顧客の購買意欲を変えるような働きかけをする
ということがアプローチの起点になります。
この③のアプローチを実施する際に重要になるのが、顧客インサイトを捉えるということです。
インサイトとは、顧客の行動や状態、それらの背景にある潜在欲求や潜在意識を洞察することによって得られる「購買意欲の源やツボ」のことを指します。自ら購買意欲に変化を与えようと考える場合は、ターゲットの状態としては購買意欲が高く、比較検討をしているステージに到達していません。
まだ購買しようと思っていない顧客に購買意欲を抱かせるためには、顧客が気付いていないインサイトを見出す必要があるというものです。このインサイトを発見する(把握する)際に、有効な手段として弊社がおススメしているのが、いわゆる3C分析にプラスして、顧客を起点とした(顧客を自社と見立てた)3C分析とマクロ環境の市場分析(PEST分析など)をMIXさせる方法です。
ターゲット顧客の競合やターゲット顧客の顧客を分析することで、ターゲット顧客が「今」自社の提供する商品やサービスを利用した方が良い理由を導き出しましょう。※インサイトセールスにおいては過去のコラムを参照ください。
③社内の接点を確認する
既存顧客をターゲットとした場合はもちろん、まだ取引の無い企業の場合でも、社内の人間でターゲット企業と接点のある人が居ないかを確認します。取引には至っていなくても、商談履歴があったり、展示会で名刺を交換していたりと、接点は意外とあるものなのです。
接点があれば、その人経由で紹介してもらったり、紹介が難しくとも、アプローチ先を教えてもらったりなど、商談までの距離が一気に縮まります。
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まとめ
今回は最近話題のワード、アカウントベースドマーケティング(Account Based Marketing)についてお伝えいたしました。冒頭でもお伝えいたしましたが、アカウントベースドマーケティングは”全社的に行う”ことが重要です。
アプローチする際は、電話やメールでダイレクトにアプローチするのはもちろんですが、それだけではなく、例えば、facebookでキーマンの該当する対象郡に広告を流したり、ターゲット企業のIPアドレスからアクセスがあった場合のみポップアップやバナーを出したり、など仕組みを使った施策等もあわせて行いましょう。
営業やマーケティング部門のみのミッションではなく、ターゲット企業を落とすためにく全社を巻き込んで推進していくことが必要なのです。セレブリックスでは、アカウントベースドマーケティングの考え方も含んだ、リードナーチャリング・マーケティングの支援も行っております。ご質問や、ご興味のある方は、お気軽にお問合せください。御社にあった運用を一緒に見つけていきましょう。