デジマジ2021~マーケティング×地方×デジタル~


2021年6月25日、地方の企業を中心に、デジタルを活用した顧客開拓を応援するイベント 『デジマジ2021』を開催しました。 このイベントでは「デジタル活用の体験情報」として、地方企業がリアルに「今」取り組むべき情報を、各分野のエキスパートが対談形式でお届けしました。

セッション1の【マーケセクション】では、スピーカーにブランディングテクノロジー株式会社 執行役員 経営戦略室CMO 黒澤氏、株式会社WACUL 取締役CIO 垣内氏、モデレーターに世界へボカン株式会社 代表取締役社長 徳田氏をお招きし、「マーケティング×地方×デジタル」について対談いただきました。

目次[非表示]

  1. 1.00:27 新規獲得にマーケティングを活用すべき理由とは?
  2. 2.37:22 地方企業のCMO、マーケター、マネージャーを任せられたら何から取り組むべきか



00:27 新規獲得にマーケティングを活用すべき理由とは?

黒澤
これからマーケティングを強化される企業様を前提にお話をします。

よく、マーケティングを強化できていなくて、集客の手段が営業か比較サイトになってしまい営業の工数が物凄く掛かっていたり、比較サイトで良い仕事が選びにくく結果として利益率が下がり、負の構造に陥ってしまっている企業様をよく見かけます。マーケティングを実施していないと、集客チャネルやビジネスの構造をコントロールしにくくなります。

そのため、まずはその状態をいかに変えていくか、というところはマーケティングを強化するべき理由になるのではないかと思います。


徳田
比較サイトか営業の二択で他の集客チャネルを知らないか、知っていても予算の振り方が適切ではなくて全部の施策が中途半端になってしまっている企業様が多いんですね。


垣内
マーケティングといっても広いので、デジタルを使ったプロモーションに絞ってお話しすると、マーケティングを活用すべき理由を一言で言えば、「コスパが高い」という点だと思います。

少し前の時代だと、コミュニケーションを取ろうと言ってもテレビCMはコストがかかりすぎるし、ビラ配りもまあまあコストがかかるという世界の中で、効果があるかもわからない状況だったと思うのですが、デジタルを使うと、少しコストをかければすぐにお問い合わせが来るので、簡単ですしコスパが高いんです。

そのため、予算があまり取れない企業や地方の企業だからそこ取り組むべきだと思います。近頃「メディアが民主化された」と言われていますが、今までは予算の豊富な企業しか取り組めなかった施策が誰でも取り組めるようになってきたので、マーケティングをやらない手はないとは思います。

新規顧客を獲得するのは大変だと思いますが、既存顧客でも接点がかなり薄れている場合は新規と同様に捉えられるじゃないですか。そういう顧客は、既にwebサイトを訪問していたり周辺にいたりするんです。

弊社だと、物凄く古いwebサイトに問合せフォームを置いたという例があります。そうしたら、それだけで月50件くらいの問い合せが来るようになったんです。つまり、お客様は皆問い合わせたかっただけなんですよね。これはDXと言えるほどの施策ではないですが、このように小さな施策でも、マーケティングとしてやらない理由はないと思います。


徳田
定石を押さえておけば上手くいくこともあるのに、できていなくて機会損失してしまっていたり、価格競争になって利幅が少なくなってしまったりすることが多いんですね。予算が限られている顧客だと、どのようにマーケティングに着手してもらっているのでしょうか?


垣内
そこが一番の肝ですよね。やるべきことは簡単に説明できるのですが、そこからの組織調整や予算調整が面倒で結局実施できないことが多いんですよね。


徳田
皆で同じ方向を目指して意思決定をして、何のためにやるのかと、限られた予算をどう割いて最適化していくかの議論というのは重要ですよね。


垣内
あとは、マーケと営業だったりマーケとプロダクトだったり、相反するミッションで動いているチームが会社の中に存在するので、マーケティングの施策が皆の合意を得られず上手く進まないというケースもよくありますね。


黒澤
やはり外部や現場から変えるのは難しいので、トップがどこまでコミットするかや、マーケティングの組織・プロジェクトに経営層を巻き込んで全社的な動きにしないと、「とりあえずSEOをやってみよう」といった小さな施策からのスタートになってしまうと思います。そのため、プロジェクトの進め方は気を付けた方が良いといつも感じています。


徳田
確かに、「何をやるか」というところから入ってしまうと、手段が目的化してしまうので気を付ける必要があるというのと、予算取りの時も、ゴールから逆算してどこにボトルネックがあってどういう優先順位で進めていくのかを考えていく必要がありますね。あとはやはり「巻き込む」ということが大事ですよね。


37:22 地方企業のCMO、マーケター、マネージャーを任せられたら何から取り組むべきか

黒澤
大前提、マーケティングを始める時はCMOやマネージャーは必要ないです。組織や役職から作ってしまうと失敗しやすいと思っています。それを踏まえて、「CMOやマネージャーになって成果を出すとしたら」という話は、業界やビジネスモデルによって違うと思うので、まずは自分たちの業界に合ったやり方を見極め、一般的にマーケティングに必要だと言われていることをそのまま鵜呑みにして始めないことが重要だと思っています。

私が仕事で関わっている領域のローカルビジネスのお話をさせていただくと、3つ重要な視点があると思っています。

まず1つ目のポイントとして「重要な顧客接点を見極めて投資する」ということです。最初にデジタルを導入するとなったときに、とりあえず幅広く手を出してしまいがちなので、自分達の顧客はどこにいるのか、デジタルで動かせるのか、そして優先的に投資するべきところはどこかというのを見極めるのが重要だと思います。そのため、業界別で押さえるべきタッチポイントは違います。

たとえば、歯科医院といった地域に根ざしたビジネスで、且つ検索をかけた時に商圏内をどこにしようかといったところを決める際に、Googleマイビジネスが優先的に出てくるようなキーワードになってきます。この場合は、ホームページに投資する前にGoogleマイビジネスを最適化することに集中した方が成果が出やすいんです。

また、不動産売却の場合は、土地や物件を売りたいというニーズがあるので、地域×カテゴリー名SEOに注力して、オウンドメディアを押し出した方が利益率が高く成果につながるかと思います。ここは業界ごとに異なってきます。


徳田
ローカルビジネスの定石があって、それぞれの業種ごとに勝ちパターンがあるからそこを把握するところからまず始めようということですね。


垣内
店舗系のローカルビジネスだと、いろいろ細かくは違えど、やはりユーザーが調べた時にいきなりオウンドメディアには入って来ないので、ポータル側が強くなってしまうと思います。Googleマイビジネスもそうですし、美容院や不動産売却でも代表的なポータルサイトが上にあがってきてしまうので、一つひとつのビジネスを上にあげるのは相当難しいです。

そのため、そのあたりの面を取りに行くといったことを各媒体でやっていくのが一番重要で、その後どうやってリストに当たりに行くのかといった話が次の優先度になってくるのではないかと思います。どういう順番でどこに人がいるのかというところを見極めずに投資してしまうと損をしてしまう可能性が大きいので勿体ないです。

歯医者のwebサイトなんかは、リピーターには意味がありますが新規にはあまり意味がないので最低限の情報を載せておけば良いですし、注文住宅で言うとwebサイトはほぼ見られず、小さい企業だとむしろ折込のビラの方が効果があるくらいなので、必ずしもデジタルを使わなくても良い場合も結構あります。


黒澤
まさにその通りで、たとえば注文住宅だと、一番重要なタッチポイントが住宅を建てる勉強会やモデルハウスへの集客なので、そのタイミングで知ってもらうというのが重要です。そのため、ポスティングの方が圧倒的に効率が良く、逆に無理にデジタルに変えようとしてしまうと成果が上がらなくなるといったことはあります。


徳田
同じ業種でもサイズやネームバリューによって打ち手が変わってくるということですね。必ずしもデジタルでなくても良いというところと、ポジションによって何をやるべきかというところを把握しないといけないということがポイントですね。


黒澤
今回はローカルビジネスに寄った話をしてしまいましたが、事業のサイズや業界によってタッチポイントは違うので、デジタルと一括りにせずに、まずは顧客の視点でタッチポイントを見極めるということが重要です。


垣内
購買プロセスがわかるだけで打ち手が大きく変わりますよね。まずは既存顧客でいいので、どういう順番で検討して我々に接点を持ってくれたのかというのを知るだけでも、再現性が高くなると思います。理想的には競合も含めて理解していきたいですが、最初はそれくらいわかっているだけでも手の打ちようは変わってくるのではないかなという気がします。


黒澤
2つ目は、「優先順位が高いのは顧客体験投資」です。デジタル投資をする時のポイントでもありますが、よく、SaaSビジネスで「バケツの穴を防ぐ」「LTVを上げる」「プロダクトが顧客のニーズに合っていない中でマーケティングの投資をしてもダメだ」といった話があると思います。ローカルビジネスの場合でお話をすると、店舗や営業体験に最初に投資をして、この2つが最適化されている結果、マーケティング投資をした時に売上や営業利益が上がっていくと思います。

しかし、ここを改善せずにいきなり集客をしてしまうというケースが散見されます。もしデジタル投資をするというところで営業に課題があったり顧客体験で不満が多く上がってきたりしているような場合であれば、先にそちらを改善するために投資してから、デジタルマーケティング、いわゆる集客を強化するという順番で考えた方が良いと思います。


徳田
営業成約率は業種によって違うと思うのですが、B2Bだと一般的な成約率は10%~20%だと言われています。このあたりはやはり業種によって違いますか?


垣内
営業があるようなビジネスで言うと同等の数字になると思いますが、今回の場合は営業だけではなく店舗なども含むので、成約率の先のLTVで見て考えましょうということになると思います。新規を獲得するということにフォーカスしがちですが、その後いかに長く使ってくれるかがより重要です。

たとえば飲食店であれば、1回来るお客様を100人獲得するより、100回来てくれるお客様を重視するんですよね。そのため、そちら側のバケツに穴が空いていると新規を獲得しても仕方がないので、まずはLTVを上げに行きましょうという考え方なのだと思います。

LTVを上げる施策があってこその新規獲得だと思っていて、お客様が1回しか来ない店と2回来る店だと、後者であれば新規に使えるコストが二倍に増えるので、後者を積極的に獲得しに行くことが重視されるのでしょう。


黒澤
デジタルマーケティングというと、新規獲得に思考が寄りがちですが、まずは既存顧客との関係を最適化することで、口コミが広がったりLTVが上がったりして効果が見込めるのだと思います。


垣内
業界構造的に、デジタルマーケティングは広告を打つなどして、新規の方がベンダー側が儲かるんです。既存の場合、メールやLINEを送るといった施策になるのであまり儲からず、提案する人はあまりいないのですが、実はそれが一番重要なんです。酷いケースで言うと、既存を獲得するのに広告を使って予算を調整してしまうこともあるので、本当に良くないなと思っています。


黒澤
垣内さんが仰っていただいた内容って、やはり内製化できた方が良いんですよね。顧客コミュニケーションは外部に頼みにくいんです。雑なコミュニケーションや形式的なコミュニケーションになりがちなので、まずはそこを内製化することで成果が出るのではないかと思います。


垣内
それこそ、地方の、昔から事業展開しているような企業だと、顧客リストがあるはずなんですよ。
創業30年であれば、30年分の顧客のリストが、デジタル化されていないとしても、かき集めれば一定数あると思うんですよね。その顧客に再度アプローチするのが圧倒的に効果がありますし、新規開拓より効率が良いと思います。結局、デジタルマーケティングはリストマーケティングになるんですよね。


徳田
新規だけではなくてリピートも見ていきましょうというところと、2回来てくれるお客様がいると投資できる金額も2倍になるので、LTVを高めていこうということですね。


黒澤
3つ目のポイントは、「アナログ投資は捨て去らない」ということで、今垣内さんが仰っていた内容が該当します。デジタルに寄せなくてはいけないという考え方ではなくて、顧客中心で考えれば自ずとアナログも入ってくるということですね。

リストのお話がありましたが、品川のとあるリフォーム会社さんが既存の顧客にひたすらDMを送り続けるということを継続し、お客様が10年に1回のタイミングでリフォームを検討される際に思い出されるようにしているという例もあります。効果測定はしにくいのですが、継続することで確実に既存との関係性を作れていて、ビジネスが成り立つ状態になっているということです。


垣内
人口が減少して高齢化している中、新規獲得を目標に掲げている企業が多いのですが、これはズレていて、いかに既存顧客のLTVを上げるかというところでしかグロースは難しいのが現状です。1度会ったことのある顧客のLTVをいかに高めるかが常に重要な論点であり、且つデジタルの使いどころなんです。新規と聞くと新しくて耳障りは良いのですが、リソースを割くだけなので、ローカルビジネスでは優先度は低くなると思います。


黒澤
BtoBも同じです。弊社は中小企業の製造業をご支援することが多いのですが、技術キーワードはロングテールを強化したり、重視するべきコンテンツがどういうものなのかは大体決まっているので、一気にフルリニューアルするよりは、部分改善でも成果は出ると思います。


徳田
製造業で言うと、クオリティとコストとデリバリーがあって、どの部分を押し出していくべきかがあまりわかっておらずフラットに伝えていることが多いと思うのですが、施策を打つ前にどういう顧客が欲しいかという見定めは大事ですよね。


黒澤
そうですね。これも結局顧客視点で考えることにつながるのではないかと思います。大体の顧客は、最初はコストより技術特徴や特定の条件で企業を捜している場合が多いので、そこを第一に伝えた方が成約率も上がりやすいと思います。


徳田
WACULさんでも製造業の支援はありますか?


垣内
あります。BtoBの製造業でCMOの場合は、まずは事業本部長にご挨拶に伺いますね。そこでどんなお問い合わせが欲しいか伺ったうえで、リードを獲得します。BtoBはリードを獲得するのが簡単なので、獲ろうと思えばいくらでも獲れてしまうんです。ただ、そのリストを熱くしていかに上手くトスするか、というのがポイントになってきます。


徳田
リソースの具合や欲しい顧客像によってどういうリストをトスするかが変わってくると思うので、まずは欲しい顧客像を把握するということがとても大事ですよね。


垣内
そうですね。あと、営業もルート営業しかしていなかったりするので、本当は新しい営業組織を作りに行くくらいしていかないといけないんですよ。


徳田
地方企業だと、マーケティングチームがなかなかなくて、マーケの機能がセールス組織と一緒になっている場合も多いと思うのですが、組織が別れている場合はまずは本部長に挨拶しに行くということが重要なポイントということですね。


垣内
営業の中でやるのであればむしろやりやすくて、営業のやる気がある人が自分でインサイドセールスを作ってしまうくらいの気持ちで、マーケ+インサイドセールス+攻めの営業チームみたいなところで売上を立てに行く。そして大きくなっていけば予算も作っていくというような構図になるのかなと思います。


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