イベント×Ops~イベントマーケティングの効果を最大化するための「運用」と「連携」~

「ウェビナー」「オフラインセミナー」などイベントの開催方法がSNSやコラムを通じて多く発信されるようになってから、イベントマーケティングは以前よりも手軽に実施出来るマーケティング施策となりました。

しかし、実際には多くの企業がイベント運営の実務に追われ、本来の目的を見失いがちです。イベント施策を実行するには多岐にわたるタスクが存在するため、本質的な成果を見落とし、分析や改善が疎かになってしまうことがあるのです。

イベント実施はあくまで手段です。イベントから得たい効果を創出し続けるためにはPDCAを素早く実行していけるような仕組みづくりが必須となります。そのためにはOps(オプス)と呼ばれる考え方を取り入れ、「運用」と「連携」を強化することが重要です。

本コラムでは、イベントマーケティングで発生する煩雑さを解消する「運用」と、効果を最大化するための「連携」について、これまでの弊社での取り組み方の中からヒントとなる考え方をお伝えします。


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目次[非表示]

  1. 1.イベントマーケティングにおけるOpsとはなにか
    1. 1.1.イベントマーケティング
    2. 1.2.Ops(オプス)
  2. 2.イベントマーケティングが煩雑になってしまう原因
      1. 2.0.1.企画
      2. 2.0.2.実行
      3. 2.0.3.分析・改善
    1. 2.1.イベントマーケティングの業務・連携範囲の広さ
    2. 2.2.イベントマーケティングで取得するデータの散在
  3. 3.イベントマーケティングで生じる問題と解決方法
    1. 3.1.細かい型(テンプレート)をたくさん作る
    2. 3.2.情報共有方法をシンプルにする
    3. 3.3.依頼する範囲を明確にする
    4. 3.4.ツールの使い方を工夫する
    5. 3.5.イベントの内容を知っている人を社内に増やす
  4. 4.おわりに:手段としてのイベントの効果を最大化するために



イベントマーケティングにおけるOpsとはなにか

最初に、「イベントマーケティング」「Ops」それぞれどのようなことを指しているのか、改めて定義しておきたいと思います。

イベントマーケティング

イベントマーケティングとは、特定のイベントを企画・実施することによって、ブランドの認知度を高めたり、製品やサービスの販売促進を図ったりするマーケティング手法の一つです。
イベントマーケティングにはさまざまな形態がありますが、BtoBの領域においては展示会、セミナー、ワークショップ、プロモーションイベント、製品発表会、ユーザー同士の交流会、大規模なカンファレンスなどがあります。
これらのイベントを通じて、参加者に対して直接製品を体験してもらったり、ブランドのメッセージを伝えたり、ユーザーの声を直接集めたりすることができます。

Ops(オプス)

「Ops」という言葉は「オペレーションズ(Operations)」の略です。
組織が効率的に機能し目標達成を支援するための、テクノロジー活用、プロセスやシステムの運用や管理、活動を最適化する役割の事を指します。
開発に関連する「DevOps」(開発と運用の統合)、マーケティングに関連する「Marketing Ops」(マーケティングオペレーションズ)、営業活動に関連する「Sales Ops」(セールスオペレーションズ)  など、特定の業務に関連するオペレーショナルな側面を指す場合にも使われます。
つまり、イベントマーケティングにおけるOpsは、「イベント実行のためにツールやプロセスを最適な状態にし、効果を最大化すること」となります。

イベントマーケティングが煩雑になってしまう原因

ここからは、話を分かりやすくするために「ウェビナーを開催する」という場合を例にして、具体的な業務内容から、どんなところに煩雑さが潜んでいるのか話を進めてみたいと思います。

ウェビナーにおいて実行される業務は、「企画」、「実行」、「分析・改善」 の3つのフェーズに分かれ、それぞれのフェーズでは具体的に下記のような業務が発生します。


企画

イベントのコンセプトやテーマの策定
スケジュールの決定
登壇者のアサイン
イベント全体の予算の策定と管理
ターゲットの設定と集客計画策定
イベントの効果測定と評価のための指標の設定

※企画に関してはこちらのコラムで詳しく解説しています。併せてご参照ください。


実行

会場(オンラインシステム)の設定
イベントページ作成
各種制作物のデザイン
集客および参加者管理
緊急事態や不測の事態に対する対策計画
フィードバックとデータ収集のシステムの整備
当日の運営


分析・改善

関係部署との連携
参加者、登壇者へのフォローアップ
集客施策の振り返り
参加者情報(アンケート)をもとにした振り返り


これらの業務を進める中で煩雑さを生み出しているのは主に「業務・連携範囲の広さ」「データの散在」にあると考えます。

イベントマーケティングの業務・連携範囲の広さ

上記で紹介したような活動がスムーズに実行され、何度か繰り返されるとある程度「型」が出来て、より効果の高いイベントを企画できるようになってきます。しかし、「型」が出来るまで回数を重ねていくのは容易ではありません。

イベント運営は業務1つ1つの難易度は高いものではありませんが、領域が広く、タスクの物量が多くなりがちです。さらに、計画してから実行するまでに短くても1か月はかかります。定期的に開催する場合は、同時に複数の案件を進行している状態になります。
無事にイベントが終わったとしても、得られたリードへのフォローや分析、次への改善点の洗い出しがあります。

その際にはマーケティングチーム内の他の施策を行っているグループや、営業部門との連携が必要になりますが、計画の段階から事前にフォローの仕方や、分析データの何を見るのか調整しておかないと、開催後に衝突したり、フォローアップが遅れてしまう原因にもなります。 

また、フォローアップの担当者には登壇者が、どんな課題にどう訴求しているのかなど具体的なイベント詳細を伝えておかないと、アプローチにずれが生じ、商談や、案件創出に至らなくなってしまうこともあります。
すなわち、イベントは企画の段階から終了後まで広範囲にわたり密な情報共有、連携が必要となります。

イベントマーケティングで取得するデータの散在

業務・連携範囲の広さに加えデータも各所に散在している状態になるので、分析・改善のため取りまとめる必要があります。
例えば、広告のインプレッションデータ、メールマガジンの開封やクリックデータ、参加者の申込みや視聴データなど、これらは一般的には異なるツールで個別に管理されています。さらに、イベント後のフォローアップや商談の進展、成約情報も、通常はマーケティングチームとは別の営業チームが使用しているツールで扱われます。

このようにデータがバラバラに扱われると、イベントの全体的な効果をすぐに把握したり、必要な改善を素早く行うのが難しくなってしまします。関連するデータを一か所で管理し、分析できる体制を作ることが大切です。
各データがどのように関連しているのかも明確に出来れば、マーケティングチームと営業チームが情報を共有しやすくなり、一貫した戦略を立てやすくなります。


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イベントマーケティングで生じる問題と解決方法

「業務・連携範囲の広さ」「データの散在」について、冒頭でお伝えしたOpsの考え方から「運用」「連携」で解決するために取り組むポイントを実際に弊社でも取り入れた方法から5つご紹介します。

細かい型(テンプレート)をたくさん作る

各種業務で使用する様々なテキストや表をテンプレート化すると、テンプレートに合わせて運用が「型化」できるとともに、引継ぎや情報共有、更に複数回実施した場合の比較なども簡単にできるようになります。

テンプレート化できるものとしては下記のようなものがあります。

  • イベント企画書
    イベント概要、日時、場所(オンラインプラットフォーム)、タイムライン、関連するステークホルダーの情報、イベントの目的、ターゲットオーディエンス、予算、期待される成果を定義します。

  • 予算管理表
    イベントに関連するすべての費用(講師費、広告費、技術支援費、プラットフォーム利用料など)を管理し、予算オーバーを防止します。また、開催後に取得したリード情報と突合することで費用対効果を算出することもできます。

  • プロモーション計画
    プロモーションチャネル(メール、ソーシャルメディア、広告など)、キャンペーンスケジュール、コンテンツの種類などをまとめ、ウェビナーの告知と参加者募集を効果的に行うための戦略を立てます。

  • 登壇資料デザイン
    イベントのロゴ、色合い、フォントスタイル、セクションごとのスライドデザインが統一された形式で登壇者が情報を提供できるようにします。

  • イベントスケジュール
    セッションの時間、休憩時間、Q&Aセッション、ネットワーキングの時間帯など、イベントの流れを明確にし、関係者全員が同じスケジュールを把握できるようにします。※企画書に盛り込んでしまう場合もあります。

  • タスクと進行スケジュール
    ウェビナー実施のためのタスクと期日が記載された一覧で、表組や、ガントチャート、看板など形状は様々です。今何をしなければならないのかを全員で共通認識を持って進めることが出来るようにします。

情報共有方法をシンプルにする

情報はできるだけ必要な人に必要な分量で届くことが望ましいですが、イベントの場合実行のフェーズによって情報を渡す先や粒度が異なるため、推進者に大きな負担がかかります。
定期的なミーティングのスケジュールを設定し、全チームメンバーが参加することで情報の共有と誤解の解消を図ることもできますが、すべての回に全員が参加する必要があるとは限りません。

例えば、その時に参加必須でなければ録画で視聴したり、議事録を見てもらうなど、工数をかけずにもれなく共有できる方法を作ることが出来るとよいでしょう。
また、日々のコミュニケーションについては全員が参加しているチャットのグループ(メールの場合は全員が含まれるメーリングリスト)で行うことで、伝え漏れを防ぎ、後から確認も可能な状態にしておくと良いです。

依頼する範囲を明確にする

業務の範囲や粒度がさまざまになるので、連携先に業務をお願いする場合、「ここまでやってください」と対応してもらう範囲を明確にしないと、担当のいない「浮いた業務」が発生してしまいます。

例えば、メール配信の依頼時に「結果については配信から3日目のタイミングでこのシートの●列目に入力しておいてください」など、実行した後の情報収集までをセットで頼んでおくことで、集客から分析までの進行を連携先に預けることが出来ます。(そのためには実行前に各種情報を取りまとめる方法なども策定しておく必要がありますが)

ツールの使い方を工夫する

ウェビナーに最初に取り組むときには、既存ツールを組み合わせて実行できないかを検討すると思います。

既存のMAでフォームを作成して、メルマガで集客し、Zoomで当日の配信を実施する、というような流れであれば新しいツールを入れることなく実施できるので、特別何かを覚えることもなく  、運営ができるでしょう。

ただ、上記のように組み合わせでイベントを実施している場合、データが散在するという問題があるため、頻度高く実施することや、規模を大きくして開催する場合にデータの取りまとめに工数がかかってしまうということもあります。

どの程度実施していくのか、何名くらいの体制で実施するのかにもよりますが、少ない人数で頻度高く開催することを想定している場合には専用のイベントプラットフォームなどを利用するのも良いかもしれません。

イベントの内容を知っている人を社内に増やす

業務内で工夫できることは工夫しますが、そのあと効果をどこまで広げることが出来るのかは、実施する施策にどのくらいの人が関心を持ってくれるのか、によります。
マーケティングや営業以外にも、広報や採用などでイベントの存在を知って興味を持ってくれたら、それぞれの活動の中で外部メディアや求職者への訴求の武器として使用してくれるかもしれません。

実施するイベントは積極的に社内への広報を行い、イベントの社内認知を上げることで、副次効果が広がります。

おわりに:手段としてのイベントの効果を最大化するために

イベントマーケティングにおける課題解決のためには、運用設計とテクノロジーの活用が鍵となります。適切なテックの活用と運用の仕組み化で実働の工数は少なくして、企画の設計やターゲットへのフォローアップなど、施策の本質となる活動に時間をかけられるようになることで、効果を最大化することが出来るのです。

もちろん、予算や人的リソースは有限ですので現場でどうにもならないこともあるかもしれませんが、できる工夫を尽くして「イベント」をマーケティング施策の武器にしてみてください。

もし、イベント実施に関することでお困りな点がありましたら、セレブリックスにぜひご相談ください。まずは現状のお話を聞かせていただいた上で、最適な解決策をご提案いたします。


この記事を書いた人:杉田 惠璃

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