株式会社openpage藤島社長と語る、カスタマーサクセスとセレブリックスの営業ノウハウ【前編】

カスタマーサクセスの立ち上げや運用を行う上で、外部のプロフェッショナルを頼る「カスタマーサクセスBPO」がトレンドです。 

セレブリックスは、カスタマーサクセスBPO、カスタマーサクセスコンサルティングのサービスをリリースし、多くの企業のカスタマーサクセス組織の立ち上げと、再現性を持ってスケールさせられる仕組み作りを行ってまいりました。 

本コラムでは、日本のカスタマーサクセス業界における第一人者である、株式会社openpage代表取締役/実践カスタマーサクセス著者の藤島誓也さんと、セレブリックスの佐々木が、カスタマーサクセスの現状とこれからについて対談した内容を紹介しています。



対談者プロフィール

株式会社openpage
代表取締役
藤島 誓也 氏

株式会社ビズリーチにて当時日本でいち早くカスタマーサクセスチームの立ち上げを経験し、2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。


株式会社セレブリックス
セールスカンパニー
営業支援事業部 カスタマーサクセスDiv.
マネージャー
佐々木 俊輔

2017年株式会社セレブリックス入社。 新規営業の代行を第一線で活躍したのち、現在は様々な企業のカスタマーサクセスを支援する、プロジェクトの管理者を務める。
カスタマーサクセスの立ち上げや運営に携わり続け、カスタマーヘルススコアの設計やオンボーディングの効率化、型化を推進し、社内で最も現場を把握しながら、マネジメントを行っている。  


左:藤島氏 / 右:セレブリックス佐々木 俊輔





目次[非表示]

  1. 1.カスタマーサクセス市場の最新トレンドであるNRR(売上継続率)
  2. 2.カスタマーサクセスのチャーンレート(解約率)の今



カスタマーサクセス市場の最新トレンドであるNRR(売上継続率)


セレブリックス佐々木

本日もよろしくお願いいたします。
カスタマーサクセス(CS)の人材市場を見る限り、2018年の「SaaS元年」から人気が出始めた職種のため、まだまだ経験者が多くありません。
openpageの藤島さんは、そんな中でカスタマーサクセスの啓蒙活動を早い段階から行ってきた先駆者であると思うのですが、CS職のトレンドについてはどのように考えていらっしゃいますか?



藤島氏

おっしゃるようにカスタマーサクセス自体、まだノウハウが生まれたばかりの仕事でして、自社の人材基盤が固まっていない組織も少なくありません。加えて、近年の変化としてNRR(売上継続率)への着目もあります。

これまではチャーンレート(解約率)を下げるために、契約後の製品導入の立ち上がりであるオンボーディングを作り込むことがカスタマーサクセスの主な仕事でした。今はそこから拡張し、契約後の取引拡大、具体的には、クロスセル・アップセルによる売上貢献までカスタマーサクセスの期待値が高まっています。

売上を上げるためのセールス活動はセレブリックスの得意分野だと思いますが、実際の支援テーマとして、NRRの支援のニーズは高まっていますでしょうか?


セレブリックス佐々木

そうですね。ただし、NRR(売上継続率)だけを切り出して支援するというより、NRR(売上継続率)を向上させることを見越した形で、オンボーディングから支援をする。そんな取り組みが実態としては正しいです。

なぜなら、製品の導入から拡大に至るまでのリードタイムは長く、一足飛びには進みません。また、「契約に至った初めの取り組み以上のこと」をやろうというのがアップセルです。つまり、要件の見直しになるので、その過程で求められる商材の知識や解像度は、通常の営業時以上のものが求められるので、提案のハードルはより高くなります。


藤島氏

なるほど、たしかにカスタマーサクセスのエクスパンション工程(※)だけを切り出してやるという取り組みは難易度が高いですよね。
あくまで取引の積み重ねで信頼関係を築き、今の契約では出来ないような大きな取り組みをしていくのがクロスセル・アップセルだと私も思います。
取引拡大には成功体験の積み重ねが重要になります。カスタマーサクセスにおける営業というテーマは、セレブリックスはかなり研究していそうですよね。

※エクスパンション工程:アップセル、クロスセル、パッケージセルなどによる「顧客の利用拡大」の工程



セレブリックス佐々木

はい。私たちセレブリックスのメソッドとして、「カスタマーサクセスにおける営業プロセス」を科学するというのが強みとしてあります。我々の数値を見ても、アップセル・クロスセルは、その前段階の活用促進の段階から対策を打たなければ成功せず、取引は大きくなりません。

実際、あるクライアント様が、アップセルに注力したいと安価なインサイドセールス支援会社に発注したらしいのですが、全くうまくいかなかったようです。
なぜかというと、そのインサイドセールス支援会社は、商材知見、業務の解像度、契約から活用のプロセスをすべてすっ飛ばして提案をしていたからなんです。

いくらセールスが強くても、商材知見がない状態で、かつ、これまでの工程を理解することなくアップセルにつなげることは難しいとわかるエピソードでした。


藤島氏

取引とは段階的なもので、過程を飛ばして取引の拡大を迫ってもうまくはいかないということですね。データや事例に裏付けられていて納得しました。

また、取引を大きくしていく指標であるNRR(売上継続率)が注目されることで、チャーンレートの注目度合いは前より減ってきているようにも思えますよね。この点はセレブリックスとしてはどうお考えですか?


カスタマーサクセスのチャーンレート(解約率)の今

セレブリックス佐々木

たしかにチャーンレートの注目は少なくなってきてはいるのですが、市場においては常に競合サービスは存在し、各社が企業予算を奪い合っている状況です。

予算は定期的に見直されます。その会社と取引を続ける理由が明確でなければ、リプレイスされてしまうケースは数多く見られます。


藤島氏

そうなんですね。昨今、複数製品による「コンパウンドスタートアップ戦略」を取ろうとする会社が増えています。1製品だけでなく複数の製品ポートフォリオを揃えることでクロスセル売上の最大化を図る戦略です。

しかし、契約している顧客から見れば、複数製品以前に、1つ1つの製品の導入・継続価値があるかどうかを常に見定めています。資金に余裕のある企業を除き、原則、製品契約の継続に対する顧客の目はシビアであることは変わりません。

むしろ複数製品の戦略を描き、他製品の事業開発に目移りしている中、1つ1つの製品サービスの磨き込み競争を甘く見て、現場の顧客満足から離れている可能性もあります。競合からすれば、むしろ一点突破のチャンスがあるようにも見えてしまうわけですね。チャーンレートの意識が薄まったからこそ、リプレイスされてしまう危険があるのかもしれませんね。


セレブリックス佐々木

はい。カスタマーサクセスのトレンドとしてテックタッチへの注力が各社にあることを逆手に取り、あえてハイタッチやBPOに注力をし、対面の強みで競合の顧客から契約を勝ち取るというケースも見たことがあります。
また、業界構造のプレイヤーは常に変化しているので、メガプラットフォーマーの変化や法規制の変化に合わせた開発をいち早く行い、その新機能をフックにして他社から自社に顧客を乗り換えさせるような事例もあります。

だからこそ、知識とスキルのある営業パーソンとカスタマーサクセスの人員が、しっかりと顧客をつなぎ止め、変化の予兆を認識していないと、さらっと競合に取られてしまう可能性は今でも否めません。つまり、チャーンレートも安泰ではないということです。


藤島氏

その通りですね。私たちは契約の維持拡大において、よく「グリップする」「握る」ことの大切さを話しています。

何を目標に取引をして、どう動き、どう結果を出していくのかの合意形成を定期的に行うこと。そして合意形成をもとに取引を確実に前に進めることが解約防止にも取引拡大にも繋がります。

競合に奪われてしまうカスタマーサクセス組織はこのグリップ力が弱い。グリップする力、日本語で言うとすれば「合意形成力」についてはセレブリックスでも強みとして挙げられていますよね。



セレブリックス佐々木

はい、カスタマーサクセス職種の人は、正直、営業に苦手意識がある人も多くいらっしゃいます。営業が苦手ということは、顧客と合意を取ることが苦手ということです。
とはいえ、合意を取りながら粘り強く契約を維持し、拡大していくことは商談において何より重要です。
これを推進するためのコミュニケーション、資料、スクリプト、何を握るか、セレブリックスはすべて型にして設計と運用をしています。

「セレブリックス流の商談スタイル」がありまして、導入目的を常に想起させながら、顧客がやる理由をグリップする商談が我々の強みです。
このスキルはセレブリックスのカスタマーサクセス支援でもかなり活きています。解約率ならびにNRR(売上継続率)のどちらの指標を追ううえでも必要なマインドセットだと思います。


▶▶▶ 後編へ続く


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