デジマジ2021~インサイドセールス×地方×デジタル~
2021年6月25日、地方の企業を中心に、デジタルを活用した顧客開拓を応援するイベント 『デジマジ2021』を開催しました。 このイベントでは「デジタル活用の体験情報」として、地方企業がリアルに「今」取り組むべき情報を、各分野のエキスパートが対談形式でお届けしました。
セッション2では、スピーカーに株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 伊藤氏、ベルフェイス株式会社 セールスグループ インサイドセールスチーム リーダー 岡崎氏、モデレーターに株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長 横山氏をお招きし、「インサイドセールス×地方×デジタル」について対談いただきました。
目次[非表示]
01:28:42~ インサイドセールスとは
伊藤
一言で言うと、お客様の接点あるいは起点となる役割だと考えています。現代風に言うと、おそらく「デジタルを用いて、旧来的な営業よりもむしろ最前線で、お客様との接点・起点となる役割」になるのではないかと思います。
岡崎
インサイドセールスは、営業プロセスの中で商談の見極めを担っている役割だと思いますので、単純にテレアポのように捉えている方も一部いらっしゃるのかと思うのですが、そうではなく、より良い商談を作っていくための重要な役割と感じております。
横山
セールスフォースドットコムさんなどがメインとなって書かれた『営業力強化の教科書』という書籍があるのですが、最近、この書籍を私の『予材管理大学』というYouTubeチャンネルで紹介してきたんですね。もちろんインサイドセールスに関する解説もさせていただきましたが、その中で私が使ったインサイドセールスの例がわかりやすいと視聴者の方から言っていただけたので、ご紹介させていただきます。
先ほど岡崎さんも仰っていたと思いますが、これまでは「インサイドセールス=テレアポ」といった、アポイントを取るまでが役割で、アポイントを取ったら一般的な営業に繋ぐようなイメージがあったのですが、現在はインサイドセールスが担う役割は多岐に渡っています。
動画の中で、私はインサイドセールスを「サッカーで例えると中田英寿だ」と言ったんです。当時、中田選手はキラーパスが代名詞だったわけですが、フォワードに対して物凄い鋭いパスを出すということで、いわゆる司令塔という役割を担っていたんですね。
今、インサイドセールスというものが全体を掌握していく、そしてお客様との接点の起点になっていくので、フィールドセールスにトスアップするだけではなく、製品開発やマーケティングチームに再度案件を戻したり、カスタマーサクセスに対してトスしたりするということがあって、マーケティングから営業まで全体の司令塔になりつつあるんです。したがって、インサイドセールスが担う役割というのは非常に大きくなっていると思います。
ちなみに、セールスフォースドットコムの中ではインサイドセールスの役割はどうなっているのでしょうか?
伊藤
まさに中田英寿だと私も思っています。認知度が低かった10年くらい前までは、まだまだ社内でのインサイドセールスの役割が浸透しきっていなかったように思います。その時に、あるフィールドセールスの方が、「セールスフォースの中でのインサイドセールスはまさにサッカーで例えるとボランチだね」と言ってくださったんです。
ボランチとは攻撃の起点あるいは守備の起点になりますけれども、そこからいろいろなパスが繋がっていくということになります。マーケティングチームにイベントのフィードバックもしますし、既存のお客様と少し会話をさせていただいて、カスタマーサクセスに渡すといったところも一部取り組んでいますので、まさに起点となっていく役割という認識が年々深まってきているのではないかと実感しています。
横山
組織の中の意識改革が非常に大事だと思っています。よく、フィールドセールスではなかなか活躍できない方を社内の電話対応に回すといった考え方が散見されます。これはとんでもなく違っていて、むしろ司令塔になれる人間は優秀でないといけないんですよね。そのため、インサイドセールスは非常に重要なポジションになりつつあると思っています。
つまり、インサイドセールスは営業の前線で活躍できない人が社内で電話対応をするといったものではないし、テレアポやお客様の問い合わせ対応でもないということで、最近ではインサイドセールスに憧れている若い方も増えている気がします。
岡崎
私のチームも、全員営業出身なんですよね。もともと営業をバリバリやってきて、次のキャリアとしてインサイドセールスに挑戦している状況なので、伊藤さんと横山さんの仰る通りだなと感じています。
01:36:23~ 地方においてインサイドセールスに取り組むメリットとは
岡崎
たくさんあるのですが、絞るなら2つで、営業の効率化と採用です。
地方であればあるほど営業1件行くのに移動時間も含めると大変な時間が掛かりますよね。むしろ移動時間の方が長いということはざらにあると思うのですが、インサイドセールスを導入することによって、本当に訪問が必要なのか見極めることもできますし、事前にお客様の声を聞くことによって準備もしっかりできるんです。
そのため、オンラインであっても訪問であっても、「営業だけでなくお客様にとっても良い営業をするための分業」という形で営業の効率化が図れるのではないかと強く思っています。
伊藤
チームで営業をすることって重要だと思うんですよね。通常の営業ですと、どうしても移動時間+実際の商談時間で大体2、3時間くらい、同席する上席や同じチームのSEの方の拘束時間が発生していたと思うのですが、オンラインになると移動時間がゼロになりますので、同席いただけるチャンスが増えたと思います。
その結果、コロナ禍の中でも成約率へのインパクトは大きいでしょうし、これまでなかなか見えてこなかった、営業の方の日々の機微が見えやすくなるというのは感じております。
横山
先ほど岡崎さんが仰っていた採用の部分というのも物凄く重要なポイントだと思います。
あとは、社員のリテンションにもつながると思うんですよね。たとえば、地方出身で地元に戻らないといけなくなって仕事が続かない場合などでも、辞職するのではなく、地元でインサイドセールスとして活躍していただくという会社の制度があることは大きなメリットだと思います。
今、人の力というのは非常に重要になっていますし、そういう制度・風土があることによって「この会社に勤めたい」と思われている方は多いと思うんですね。岡崎さんもそのあたりは身をもって感じていらっしゃるということですよね。
岡崎
本当にそうですね。私は、ベルフェイスとしてはフル在宅勤務第一号だったのですが、今やコロナの影響もあって全社在宅勤務なので、場所は全く関係なく採用できますし、地方の企業様は、東京に住んでいても地元に貢献したいという方でも採用できるので、その意味では採用の可能性はかなり広がりますよね。
01:42:18~ 地方におけるインサイドセールスの実態
伊藤
まず、地方でもインサイドセールスに取り組む企業様が顕著に増えてきていると実感しています。私も現在、通常の営業活動をしていますが、お客様から「インサイドセールスの経験を聞きたい」「インサイドセールスをどうやって始めたらよいのか教えてほしい」という声をいただくことが多くありまして、ステップの進め方や重要なポイント、気を付けるべきポイントなどをお話しする頻度が高いです。
横山
でも、普及率としてはどちらかと言うと大都市圏の方が高いのでしょうか?
伊藤
現時点での普及率は大都市圏の方が高いと思います。ただ、この1年~1年半くらいでインサイドセールスに取り組みたいと希望されている地方の企業様が増えてきているのは間違いありませんので、肌感覚ではありますが、昨年から今年にかけて、インサイドセールスを導入している企業の増加率という観点では大都市よりも高いかもしれないですね。
やはり地方ですと、東京・大阪・名古屋といったマーケットを取っていきたいものの、コストがそれ相応にかかってしまって二の足を踏むということは多かったと思います。しかし、インサイドセールスであれば、電話やベルフェイスさんのような仕組みを使ってどこからでも営業活動ができるので、大きな期待と、これまで取り組めなかった解決法として着目されているように感じます。
岡崎
伊藤さんのお話はまさにそうだなと思っていて、インサイドセールスという言葉自体は浸透してきているものの、「何から始めてよいかわからない」「周囲で取り組んでいる企業がないのでどうしてよいかわからない」といった声はいただいています。
東京に行くとなるとリードタイムが長くなりますが、インサイドセールスだとアポイント調整から商談までを短い時間で実施できるので、地方企業こそインサイドセールスを取り入れられるとメリットが多いなと改めて感じました。
横山
私から質問なのですが、オンラインにおける営業活動に関して、お客様側はどうなのか、ということお聞きしたいです。お客様側もずいぶんと意識が変わってきたような気がするんですよね。営業される側の意識改革という観点ではいかがでしょうか?
岡崎
インサイドセールスを導入するまでは、お客様側の抵抗が強いのではないかと思われる企業様が多いのですが、実際始めてみると、お客様は意外と平気な場合が多いです。やはりお客様側も、訪問だと会議室を準備したりお茶を準備したりやることが増えてしまうんです。インサイドセールスであれば話を聞きたい時にすぐ聞けるというメリットもあるので、実はお客様側からもインサイドセールスの方が有難いという声はいただいています。
横山
コロナ禍においてお客様の意識改革もかなり進んでいるので、リモートで打ち合わせをするということに慣れてくると、逆に訪問される方が抵抗を感じられる場合もありそうですよね。
伊藤
全く同感です。私はフィールドセールスの責任者ですので、当然訪問してお客様とコミュニケーションを取ることはあるのですが、コロナ禍以降は営業活動の9割以上がオンラインのみになっています。
残りの1割は訪問するケースもありますが、お客様からご注文書をいただくまではオンラインで対応させていただき、受注が決まってプロジェクトが始まる、あるいは始まった過程で初めてご訪問させていただくというケースが多くあります。訪問する理由としては、ご契約の御礼の意味もありますし、改めて「私たちのチームが対応します」という姿勢を示すために訪問していますね。
01:52:09~ セールスフォースドットコム社では、webからの資料ダウンロードのあと、すぐに電話を架けられますが、すぐに電話を架ける方が良い理由があるのでしょうか?
伊藤
繋がる確率と顧客体験を高める、この2つを目的としています。まず、繋がる率を高める点では、資料請求した瞬間あるいはその数分後であれば、お客様が検討を考えている可能性が高いので、早く連絡をすることになっています。
顧客体験を高める点は、我々がセールスフォースというツールを実際に使って早い対応を実現しているという事実を示すことで、その顧客体験を見込みの状態で体験していただき、「自分たちの業務プロセスはこうすることで見直せるんだ」と気付いていただくためです。
ただ、すぐと言っても時間は15分と定義しています。BtoBがメインのサービスですので、お客様のことをしっかり調べて、お客様のビジネスを少なからず理解した上でご連絡することを重視しています。ただ、この「調べる」という行動は始めたらキリがないので、15分間で押さえるポイントを定義し、調べた後にお客様に連絡差し上げるということを行っています。
横山
確かに、顧客の気持ちはホットですもんね。鉄は熱いうちに打てと言いますが、すぐに連絡があったら、「ちょうどその気になっていたので…」という話になる可能性もありますね。
岡崎
資料だけではわからないことがあったり、ちょっと訊きたいことがあったりするじゃないですか。その場でお電話することによって対話ができるので、お客様に合わせて情報提供できるというのが大きいなと思います。
2:01:36~ インサイドセールスは何から始めるべきなのか
岡崎
まず、何から始めるかという観点では、何をゴールとするか、あるいは何のためにインサイドセールスを取り入れるかという設計の部分が一番難しく、一番大事だと思っています。インサイドセールスと一口に言っても、企業様の商材によって全く違いますし、営業プロセスによっても違ってくるので、設計の部分から始めていくべきだと思います。
システムに関しては、やはり情報の連携が重要になってきます。社内での情報連携としては、弊社ではセールスフォースは無いと生きていけないほどの存在になっていますし、それ以外にも、コミュニケーションツールやバーチャルオフィスツールを活用して、スムーズな連携を実現しています。
横山
社内でも、地方のオフィスに勤めている方や自宅で勤務している方もいらっしゃって、そこが1つのチームになっているわけですね。昔はチームと言ったら物理的な空間を共にしている場合が多かったですが、そうではなくなってきましたね。
伊藤
私も、まずは設計が必要だと思っています。それに加えますと、何かしらのKPI、目標を定めることですね。
たとえば、アポイント数や架電数、商材にはよりますが案件数、案件金額、そこから成約した金額などです。あらかじめ、1人あたりのインサイドセールスにどれだけの数字を求めるかを設計すると思いますが、それを最低でも半年に1回、可能であれば年に4回くらい見直すタイミングを設けて、その数字が実際の営業、売上にどうつながったかを確認し、つながっていないのであれば役割自体は変えずとも、KPIは変える必要があると思います。
私たちの失敗談ですと、当社も10年程前のインサイドセールスは案件数に重きが置かれていたのですが、売上全体のインサイドセールスの寄与率が低迷している時代がありました。そういった経験を踏まえて、案件数ではなく成約金額にインサイドセールスの役割を大きくシフトした結果、当初はKPI達成が難しかったものの、活動の積み上げと経験値の向上で売上への寄与率が上がってきました。
横山
これは私の考え方なのですが、設計から始める一方で、小さく始めていくという方法もあるのではないでしょうか。
たとえば、今までシステムやツールを使ったことがない、オンラインやリモートで商談したことがないといった場合、まずはそこから始めてみるだけでもだいぶ違いますし、小さなところから発展していくことも重要なのかなと思います。
そしてやはり、インサイドセールスはコスト削減に大きく寄与すると考えています。私の持論なのですが、コストというのは3種類あって、経済的コスト、時間的コスト、精神的コストがあります。移動の労力が落ちることによって、少なからず経営視点で考えると財務的なインパクト、つまりコスト削減効果というのは非常に高いと思っています。
伊藤
私もそう思っています。まさに経済的コストという観点だと、移動や出張にかかる経費が減ることで1商談あたりの単価が間違いなく低くなると思うんですよね。
たとえば、フィールドセールスですと、頑張っても1日3件/週で15件くらいの商談が限界値だと思います。しかし、これをインサイドセールスで完結すると、おそらく1日6~7件くらい商談を入れても問題ないのではないかと考えています。そうしますと、それだけで倍の商談数を担保できて案件への寄与率も倍増すると考えています。
横山
ありがとうございます。まとめとなりますが、今、インサイドセールス部隊を作ることになってそのためのシステムを導入したとしても、そう簡単にインサイドセールスが機能するということはありません。
しかし、この潮流は間違いなくスタンダードになっていきます。先ほどお話ししたとおり、既に営業のスタイルもお客様の思考も変わってきているということは、普及してからインサイドセールスを導入するとなるとかなり遅いと私は思っています。
したがって、地方の企業様こそインサイドセールスを導入して、生産性向上につなげていただきたいと思っています。